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2020/04/01

「空とぶかめ」三村雅司全詩集

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 生産性で人が評価される世の中、政府は「一億総活躍社会」を提唱する。そんななか、かめちゃんは悠々と泳いでいる。いや、本人は必死だ。しんどいことも多いだろう。
 それでも生きている喜びを素直に噛みしめながら、わたしたちにこんな言葉の欠片を届けてくれた。この詩集は、きっと多くの「生きづらさ」を抱えた人の心に響き、癒しと救いを与えてくれるだろう。これは、青く澄んだ心の海の底から、かめちゃんが拾い集めて届けてくれた贈り物。深い深い海の底を突き抜ければ、そこは青い空。最も個人的な心の真実が、無数の人の心につながっていく。 
(寮 美千子 跋文より一部抜粋)
 

山をこえ 海をこえ 星をこえ あなたに向かって
 
 うさぎとかめの競争の話で、ほんとうに負けたのはかめのほうだ。
 かめは、速く走ろうと思ったとたん、かめであることのすばらしさを忘れてしまった。そして日なたぼっこをしたり、泳いだり、のんびり歩いたりする、かめらしいのどかな生きかたを捨ててしまったではないか。
 その点うさぎは、ここちよく昼寝して、力のかぎり走って、競争には負けても、うさぎであることを失わなかった。
 「かめもがんばって、うさぎのように走りたまえ」なんて、そんなうさぎだけの立場から、開発や障害者問題を考えてはいけない。かめはせいいっぱい かめらしく、うさぎも
せいいっぱい うさぎらしくしながら、おたがいに仲よく暮らしていけたらいいのに。(中略)
 わたしはここにいるぞ! そうなんだ。のろくても速くても、弱くても強くても、わたしらしくあれば、それがいちばんだ。
 こんなわけで、わたしは自分のニックネーム(かめ)が大好きだ。
 しかし本物のかめが道路でひき殺されているのを見ると、のどかに生きようとすることは闘いなんだなあと思い知らされる。
 それでもかめは絶滅しないで、のそのそ生きつづけるだろう。突き進む時代の流れにそぐわないうたを、そっとうたいつづけながら。
 そして、かめであるわたしが動かなくても、この詩集をひらいてくださったかたのところへ、わたしのこころはさっと飛んでゆく。だからやっぱり「空とぶかめ」なんだ。
 (三村雅司「あとがき」より一部抜粋)

ISBN978-4-87806-814-0
C0092
A5判170頁、並製本、カラーカバー
定価[本体価格1,200円+税]


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(2020.4.8 毎日新聞奈良版 朝刊)


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